是枝裕和「海街diary」と河瀬直美「あん」
今、話題の映画、是枝裕和の「海街diary」と河瀬直美の「あん」。初期から才能を感じていた監督たちの作品、期待して観に行った。
「海街diary」は、女優に色が付きすぎていて、すんなり物語に入り込めなかった。女優に気を使いすぎているのでは?と思わせる遠慮がちなカメラワークが気になった。唯一、新人の広瀬すずに透明感があり、河瀬直美の「萌の朱雀」に出演した時の尾野真千子を思い出した。
自転車に乗って風と桜の花びらを額に受ける、広瀬のみずみずしい表情が印象に残った。
一方、「あん」は、樹木希林と永瀬正敏の、無名性に徹した役の在り方に圧倒された。ただそこにいて生きることの、人間の豊かさ、愛おしさ、共にある自然の尊さがそっと伝わる。
あんを作るプロセスの映像はひたすら美しかった。小豆の姿こそ、真の主人公であるように思えた。
河瀬直美も是枝裕和も、無名の役者やエキストラを魅力的に撮る、そのドキュメンタリー性に心惹かれていた。今回、どちらの映画も著名な役者を使い、興行への傾きを強く感じさせ、初期作品に在る初心やみずみずしさがどこまで保たれるのか、個人的に関心かあった。
軍配をあげるとするならば、河瀬直美に。河瀬らしさを揺るがすことなく、役者は、いっさいの色をなくして役そのものとして、リアルに存在し、物語を生きていた。
是枝の「ワンダフルライフ」の、素朴な温かさを今、懐かしく思い出す。「海街diary」にも、もちろん是枝独自の温かさ、優しさはあるだろう。けれど、どこかに「計算」が見える。その「計算」は、画面から一切消しさらなけれはならないだろう。いつだって真の感動には、何の計算もないのだから。