地球のリズムへ
中村安希の「インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日」(集英社)を読んだ。
26歳の一人の女性が、47カ国を2年でたどった、旅の記録をまとめた、ノンフィクションである。
小気味良いリズムある語り口で、大陸の風が吹き抜けるかのような読後感が残った。
大陸移動の果てしなく続く道のり。時に、思うように、行かないときにも、彼女は、「臆せず抗せず慌てずいれば、地球は勝手に自転を続け、やがてすべてはあるべき場所へと落ち着いていく」。そうして、ゆったり、身を任せていると、旅は、目的地へと自然に続いていく。
先入観や常識を捨て去った所、そして、確かな、大地を踏んで、まなざしを向けたところにこそ、真実はあることを、教えてくれる。紙で知った知識など、どこかへ吹き飛んでしまう。
ひとつひとつの国に、土地に、人に、温かな血が流れている。
ページを進める度に、中村のことばは、緩やかに、地球のリズムに似た、おおらかさに満ちていく。
地球は大きい。そんな一言をつぶやきながら本を閉じた。
歩き出したい魂が、揺さぶられた1冊。