民俗学者、谷川健一の仕事
先日、24日、民俗学者の谷川健一が死去した。
本棚を見渡せば、『日本の地名』、『日本の神々』、『柳田国男の民俗学』、『心にひびく 小さき民のことば』(いずれも岩波書店)、など、感銘を受けた著作が置かれてある。
谷川の文章を読み進めていると、名もなき人々の暮らしの息遣いが聞こえてくる。柔らかな小さな命の足跡、その生きた軌跡が。
日本の地名に宿る力、土地の精霊の力を、真摯に見つめた人の仕事を、もういちど再確認する必要があるだろう。
『小さき民のことば』、あとがきに書かれた印象的なことば。
「権力から最も遠い「無告の民」の言葉は、どこか全身で自分の哀歓を示す生物たちに似通っている。舌足らずであったり、繰返しが多かったりしても、小さき者の真摯な叫びには、宇宙の無辺際の愛につながるものがあり、明恵上人もかならずや心耳を傾けてくれると信じたい」
愚直に生きたであろう民のことばの中に宿る力や愛を、谷川は見つめていた。そのまなざしの意味するものを深く考えねばならない。重力のある仕事を成し遂げた人が逝く。それは、日本という国がまた、衰弱してゆくことにつながる。
ことばに力を。この魂にぶれない軸を。
ご冥福を心より祈る。
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