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2012年4月 5日 (木)

海からの声

 赤坂憲雄編『鎮魂と再生 東日本大震災・東北からの声 100』(藤原書店)、「東北」に縁を持つ聞き手たちが、被災者に向き合って書きとめた聞き書き集、被災地のそれぞれの光景、瓦礫、船、花、祈る人々… モノクロームの写真の狭間に響く声、声、声、に耳を澄ます。

 ページをめくるうちに、被災者の生々しい言葉のうちに内包された、海からの声に立ち止った。

 気仙沼の、港に近い埋立地に建てた家を、津波に流された被災者のことばの中に。

 「そろそろこっちに返してくれ、と海に言われたような気がする」

 海は、きっと、静かに人間たちに語りかけ続けていたのだろう。太古から現在まで、ずっとずっと、寄せては返す、波の営みのなかで。

 耳を塞いでいたのは、あるいは、聞こえないふりをしてきたのは、自分なのかもしれない。  

 風にも、木々にも、ことばがあって。

 海や風や森が与え続けてくれたものに、今、深く頭を垂れ、内省の歴史をこれから刻んでゆく必要がある。

 生者のことばのうちに在る、夥しい死者のことばと共に。

 海からの声に、もういちど、耳を澄ます。

 

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