海からの声
赤坂憲雄編『鎮魂と再生 東日本大震災・東北からの声 100』(藤原書店)、「東北」に縁を持つ聞き手たちが、被災者に向き合って書きとめた聞き書き集、被災地のそれぞれの光景、瓦礫、船、花、祈る人々… モノクロームの写真の狭間に響く声、声、声、に耳を澄ます。
ページをめくるうちに、被災者の生々しい言葉のうちに内包された、海からの声に立ち止った。
気仙沼の、港に近い埋立地に建てた家を、津波に流された被災者のことばの中に。
「そろそろこっちに返してくれ、と海に言われたような気がする」
海は、きっと、静かに人間たちに語りかけ続けていたのだろう。太古から現在まで、ずっとずっと、寄せては返す、波の営みのなかで。
耳を塞いでいたのは、あるいは、聞こえないふりをしてきたのは、自分なのかもしれない。
風にも、木々にも、ことばがあって。
海や風や森が与え続けてくれたものに、今、深く頭を垂れ、内省の歴史をこれから刻んでゆく必要がある。
生者のことばのうちに在る、夥しい死者のことばと共に。
海からの声に、もういちど、耳を澄ます。
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