自然に向き合う
冷たい朝の空気が肌をさす一日の始まり。
昨日の、2012.1.11という日付の、立ち並ぶ1の重みをかみしめながら迎えた今朝の太陽の光は、ことの他まぶしく見えます。
厳しい自然の営みが列島を包み、かじかむ手に温かな息を吹きかけながら、懸命に日々と向き合う人々の姿が脳裏に浮かんできます。
震災から10カ月。積み重ねられる時間の長さ。けれど、どこか、宙づりになったまま、時が止まっているかような奇妙な時間感覚に惑わされます。
それでも、今このとき、恐ろしい自然の姿におののきながらも、また荒海へと帰ってゆく人々のたくましい後ろ姿が在る。
ふいに、ウォールデン湖畔の森の中で、自給自足の生活を営んだ、アメリカの作家、H・D・ソローのことばが心に蘇ってきます。
「自然」は人間の強さばかりでなく、弱さともうまく折り合ってくれるものだ。(『森の生活』岩波文庫)
凪の海の水面のきらめきの美しさは、わたしたち人間の柔らかな弱さに寄り添ってくれるのかもしれません。
その賢さと大きさで、人の営みを包み込む、自然。
わたしたち人間が、自然への畏敬さえ、忘れることがなければ─。
自らの内なる自然にもまなざしを向けて、一歩を踏み出してゆきます。
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