震災から9カ月 「ことばを信じる 冬」
今日は、12月11日。東日本大震災から9カ月。
ひとりひとりの小さな一歩が少しずつ光を灯し続ける一方、被災地の失業問題は深刻な状況にあり、いまだに止まらない福島第一原発の暗い影が日本列島を覆っている。
街は、なぜか去年と変わらないクリスマスのイルミネーションが輝き、奇妙な違和感を覚える。
忘れることのできないはずの問題に、どこか背を向けてうやむやにしようとする気配が緩やかに人をまとって、日々が行き過ぎていく。
静かに、そして確実に進行していく国の衰退。
それが、今現実の私たちの日常である。
しかし、心に光と水を注ぎ続けなければ、進んでいくことはできない。
昨日、日本近代文学館ホールで行われた、「言葉を信じる 冬」。
参加者は、稲葉真弓、大島龍、斉藤斎藤、白石かずこ、高橋睦郎、津島佑子、天童大人、山崎佳代子、結城文、(五十音順敬称略)
不確かな現在を未来へとつなぐことばのきらめきと力強さに触れることができた。
震災後にはじめられた、季節ごとに開かれた、この会は、静かにことばに心を向けることのできる時間だったと思う。
人間はどこへゆくのか。ことばはどこへ向かうのか。
荒波のように流れ去る情報の渦へ、ぽんと投げ出される、一本のロープのように、参加者の唇からこぼれる声は、揺らぎ続ける命を、いまここへと繋ぎとめる「意思」が感じられた。
いまやだれにも、描くことのできない、日本の、世界の未来予想図。
ひとつ、ひとつの、ひとり、ひとりの、生への希望と祈りを込めた言葉が繋いでゆく、細い絆が、ゆっくりと、新しい人間の在り方を切り開いていくと信じたい。
澄んだ青空に、日が昇り、温かな光が窓辺から降り注ぐ。
あたりまえの、日々の奇跡に、頭を垂れる。
小鳥が飛び立ってゆく彼方に、もう一つの星のきらめきを、見たい。
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