書肆山田の本 創業40周年
詩のことばは何処へゆくか。
この問いは、時代がどう移り変わろうと、表現者の内奥に常に反芻されている命題だ。
3.11以降、さらなる深まりを増しながら、この問いはいつも私の中にある。詩が、詩のことばが、まだ見ぬ未来を予言する力があるならば、恐らくは、詩集という堅固な船に乗せられて、この不穏な日々の波打ち際を、真摯なる意思を内に込めて、漂っていることだろう。
10/15~ジュンク堂新宿店で開催されている、書肆山田の本、40周年を見てきた。
エレベーターでフェアが開催されている7Fフロアへ降り立つと、壁一面に、書肆山田の静謐な佇まいの本たちが、生き生きと呼吸していた。
書肆山田の本は、どの書店に置かれていても一目でわかる。
背だけでも、表紙を見ても、後ろ姿ですらも、それは、見事なまでに「書肆山田」の本なのだ。
決して声高ではない、豊饒な沈黙と、世界を形作ろうとする堅固な意思がみなぎり、美しく、端正で、ときにその立ち姿は謎めいている。
詩、ポエジーというものが、この上なく魅力的な謎であるのと同じように。
夥しい数の本の荒波の中で、書肆山田の本は、決してぶれることがない。
人間の普遍的な孤独へとつながることばを、そのページに確かに刻んで、生きている。誇り高く、愛に満ち、手の温もりに満ち満ちている。
詩のことばは何処へゆくか。
その問いへの答えが、書肆山田の本から、聞こえてくるような気がした。
詩が、ことばが、ポエジーが、人間と手を結び合うことの奇跡は、どんなに暗い闇にも負けることのない光を生み出すことを。
一冊、一冊、手に、触れてみた。中村恵美筆名での私の詩集『火よ!』も。『火よ!』を書きしたためていた、愛おしい営みの時間を思い起こしながら。
書肆山田の本の、たぐいまれなる「垂直性」を、改めてまなざす。深い尊敬と感謝を込めて。
そして、思う。
詩は在り続ける。人間は、ことばと共に歩み続ける。歩み続ける挑戦の内に、まだ見ぬ地平が開かれてゆくはずだ。
詩の光、、ことばの光、本の光を、決して見失うことなく、歩いていこう。
★書肆山田HP
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