言葉を信じる 夏
4月に行われた「言葉を信じる 春」に続いて、今日、日本近代文学館で、「言葉を信じる 夏」が開催された。
今回の出演者は、稲葉真弓、伊武トーマ、坂上弘、関悦史、高野ムツオ、高橋睦郎、財部鳥子、天童大人、野谷文昭、(五十音敬称略)、9名。
詩、俳句、小説、翻訳、文学言語を形作る様々な分野から、「声」が届いた。
それぞれの唇からこぼれ落ちることばたちは、みな、3.11という日付から、がらりと姿を変えた世界を映し出しており、「放射能汚染」という、途方もない現実に向かう日々の苦悩がリアリティを持って表現されていた。
「ことば」に関わり、「ことば」に支えられて生きてきた者たちの声は、敏感に時代と今を感じ取り、魂を震わせる。
惑い、恐れ、哀しみ…、今はまだ、光が見えない。しかしながら、表現の現場に真摯に向き合う者たちの分かち合う声の響きの中にこそ、希望の芽生えが見える。
淡い光の下、たった一人で、それぞれの「現在」と闘う。その姿は、「言葉を信じる」、この会のテーマにまっすぐに繋がっている。
とりわけ、福島から届いた伊武トーマの低い声は印象深かった。放射線量を測る線量計の揺らぎとブランコの揺らぎを重ね合わせることばのリズム。被災地で、日々を生きる人々の心の震えが聞こえてくるようだった。
シンプルだが、力強い試み、これからも、場を共有していきたい。
☆次回、「ことばを信じる 秋」、10月22日(土)13時開演。日本近代文学館ホール
「ことばを信じる 冬」、12月10日(土)開催予定。
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