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2011年2月22日 (火)

ヒア アフター 生と死の狭間で

 

 人間は、死んだら一体どこへ行くのか?

 この有限の生の行方、という謎は、私たちの人生の転換期に、不意に訪れる。そして、「いかに生きるか」という根源的な価値観をその都度、大きく揺さぶるものだ。

 スティーブン・スピルバーグ製作総指揮、クリント・イーストウッド監督、マット・デイモン主演の映画、「ヒア アフター」は、「死後の世界」へまなざしを向けた作品だ。

 不意に人生を襲った、災害、津波によって、生死の境を彷徨い、臨死体験を経験したジャーナリストの女性マリーと、霊能力という特異な才能を持ったがゆえに、見えすぎる、知りすぎることによってもたらされる苦悩を抱えたまま、ひっそりと過去を消して生きようとする霊能力者、ジョージ、そして、事故で最愛の兄を失った少年、マーカス。3人の人生に訪れた「生と死」の問題が交錯し、それぞれが、絶望や孤独から、希望へと光を見出していく物語。

 マリーは「死」の世界を垣間見ることで、ジョージは「死者」の声を聞くことで、マーカスは最愛の兄の「死」を見つめることで、今ここにある「生」をこそ深く見つめることなる。

 そして、それぞれの経験した「死」こそが、3人を巡り合わせる。死の世界の、死者の導きが、今ここに生きる者たちの、存在の素晴らしさと豊かさに「光」をあてるのだ。

 臨死体験をしたマリーが見た映像、光の靄の中に人がまばらに立っているシーンはどこか仄かに懐かしい。私たちが彼岸からやってきた存在であり、また帰ってゆく世界であるならば、それも当然かもしれないが、あまりにもリアリティがあって、少し怖くなった。

 十数年前、実父が心臓発作で倒れた時、薄れゆく意識の中、とても強い光に吸い込まれていく経験をしたそうだ。それは、この上なく心地よいもので、引かれるまま行ってしまおうか、と思ったが、そのまま行ってはいけない、と思い戻ってきたら、意識が戻ったらしい。

 父の見た世界も、きっと「死後の世界」の入り口だったのだろう。

 

 死者の言葉を聞く、一人の人間の背景を知りすぎない方がいいという、ジョージのことばはせつない。けれど、生の側からのみ、人生を見つめるだけでは、人生はもっと寂しいものになってしまう。光があるから闇があり、生と死は結び合い、重なり合って、「今」という時間が煌めきを増す。

 生きて前を向いていれば、きっと分かり合える人間に出会い、豊かな時間がそこに育まれてゆくのだから。

 主演の、マット・デイモンの控えめな演技が良かった。霊能力を持つ繊細で誠実な青年を好演していた。全体的に落ち着いたトーンの、じんと感動できる作品。どうぞみなさんも映画館へ!

 

 ☆2011/2/19~全国ロードショー

 

 

 

 

 

 

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