フォト

最近の記事

Facebook

Twitter
2018年10月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ

« こどもを育む豊かなことばを | トップページ | 1年の終わりに »

2010年12月 9日 (木)

山崎佳代子『みをはやみ』

 

 ベオグラードに住む詩人、山崎佳代子の『みをはやみ』(書肆山田)を読んだ。

 柔らかなことばの優しい語り口の背後に、流血の土地を見つめてきた、まなざしの強さがある。

 1編1編の作品の根底に深い祈りの声が響く。

 声高ではない、澄んだ声。

 歴史に翻弄される、人間の痛みは一体いつまで続くのか。

 

水脈速み

霧深い山の森から

樹木を切り出し

男たちは舟を作った

果てしない水を軽やかに渡り

高い波にも消えぬ

舟を男たちは

作った

この水のむこうに

あらそいのない世界はないか

諍いのない

国は無い

のか

小さくてもいい

貧しくてもいい

遠くてもいい

草が

草となり

花は花となり

人がふたたび人となる

国はないのか

国はどこかに

無いのか

─以下略─

 

 草も、花も、人も、みなかけがえのない命。生命が、生き生きと尊厳を守られる世界を心から望む。

 土地の風と光と血を目の前に、詩人はひるむことなく、言葉を置く。

 ページという名の自由な土地で、訪れる平和を願う。

 ことば、ひとつひとつが、槍のように心に突き刺さる。

 あらそいや、諍いは、遠い国の問題ではない。

 今ここにいるわたしたちの問題なのだ。

 近隣の国でも火柱が立った。

 

 一人、一人、自らの心へ問いかけねばならない。

 あらそいや諍いが何を生み出すのか。

 生み出す物など何もない。

 奪うだけだ。

 希望を、夢を、子どもたちの輝くひとみを。

 

 

 

 

 

« こどもを育む豊かなことばを | トップページ | 1年の終わりに »

詩の話」カテゴリの記事