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« 淺山泰美 ライアーの音色 | トップページ | 美内すずえ  『ガラスの仮面』 »

2010年11月 6日 (土)

伊勢英子の『よだかの星』

 あらゆる芸術作品の背後には、必ず、作り手の内面の叫びが聞こえてくる。

 宮澤賢治どうわえほん『よだかの星』の、伊勢英子の絵には、よだかの存在の叫びと共鳴した、「生」というものの不条理と苦しみが伝わってくる。

 みにくい鳥、と呼ばれ、名を変えろと迫られる。生きる意味、存在の意味を問い続け、ひときわ輝く星になって、消えていく、哀しい鳥、よだか。

 伊勢英子は、よだかの叫びを表現するために、紺や青の美しい空の下地に、おびただしい色の赤を塗りこんだという。

 ページをめくるたびに、静かな青の静寂の背後に、よだかの血が流れ、よだかの声が聞こえてくる。

 「なんにもわるいことをしたことがない。どうして、ぼくは、いやがられるのだろう?」

 誰にでも、自らの存在に「なぜ?」と問う瞬間が訪れる。

 解けない疑問に揺れ、燃えるような夕焼けを見つめながら、うなだれる日があるだろう。

 生と死。

 めぐりゆく時間の中に一瞬、光り輝く命の灯火。

 伊勢の描く、空は、哀しい。けれど、その根底には、よだかのピュアな優しさが、生の意味を真摯に問い続ける誠意が、色と色のはざまにそっと、見え隠れする。

 筆を、絵具を、幾度も幾度も紙にあてる、画家の背中が見えてくる。

 

 夜空を見上げれば、一番星が、きらめいている。

 

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