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2010年10月24日 (日)

小川三郎 『コールドスリープ』(思潮社)

 世界を感受する。

 乾いたことばの断片が皮膚に突き刺さる。

 開いたページが鈍色に光る。

 

 小川三郎『コールドスリープ』(思潮社)の「世界の果て」に強く惹かれた。

 戦争へいこう。

 どこまでも戦争へ行こう。

 もう帰ってこなくてもよくなくなるまで。

 遥か遥か遠くまで

 胸を張って戦争に行こう。

 すでに帰ってこなくてもよい地点に私たちは立っているのではないか。はっきりと断言される瞬間、ぐらりと足元の寄る辺なさに目眩がする。

 戦車が疾走し、戦闘機が飛び交うなか

 いままで誰も行かなかった土地を目指して 

 迷わず進もう。

 全ての人が死に絶えるまで

 戦争が終わることはない。

 …中略…

 質問は既に尽きた。

 あとはただ

 前進するのみ。 

 進むしかないのだろうか。全ての死を地球が知るまで。幾度も繰り返される、「否」の声は、どこにも行きつく場所はないのだろうか。

 死が軽やかに宙を舞い

 無人の地球を歌っている

 淡々と描かれる世界の果ては、一見荒涼とした、寂しさに満ちあふれているように見える。しかし、真綿の雪が、冷たさとともに、柔らかな美しさを併せ持つように、ことばの背後に、血の温かさと静かな祈りが感じられた。

 ことばに連れて行かれた、無人の地球、その地平を、しばし、眺めてみる。

 

 

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