なぜ 戦争はよくないか
黒人差別問題を扱った作品、『カラーパープル』の著者、アリス・ウォーカーの絵本、『なぜ戦争はよくないか』(偕成社)は、黒のストイックな装丁とストレートなタイトルで、目を惹く。
そっと、かたわらにいる子どもたちに語りかけるように、「戦争」のまなざしを通して、「戦争」を語る。
戦争だって
自分の考えをもっているわ
だけど けっして知ろうとはしないのよ
じぶんがいま おそおうとしているのが
だれなのかを
わらの匂いをかぐロバと、夕食のポレンタと卵のことを考える男の子、子守唄を歌いながら赤ん坊を抱く母親、あたりまえの穏やかな日常に、「戦争」は襲いかかる。
戦争は
たくさん経験を積んでも
少しも賢くならないのよ
じぶんのものじゃない
どんなものも
戦争は
へっちゃらで
破壊してしまうの
戦争よりもずっと
ずっと古いものだって
へっちゃらで
戦争は、少しも学ぶことなく、悲劇を繰り返す。さまざまなものを破壊し、食べつくし、「戦争が食べつくしたあとに のこるのは 大地に たまった 唾液みたいな ぬるぬるとした 水たまり それが しみだして 地下水に まじって 村の 井戸水に入りこむ」
その水は人を蝕む。体だけではなく、きっと心も。
この戦争の水がしみ込んだ大地の上に立つ私たちは、どうすればよいのか。
それでも
戦争が正しいというなら
ある日
みんな
飲まなければいけなくなるわ
戦争のしみこんだ
水を
この場所で
突き放すように終わるラストページ。深い井戸を覗き込む人々の真上は満月が美しく輝く。
著者は、現実を淡々と語る。さりげなく、深い祈りを背後に抱えて。
数年前に来日した際、彼女が言ったことばを思い出す。
「東京の大地は、もうこれ以上建物はいらないっていってるわ」
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