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« 空を流れる川 野木京子エッセイ集 | トップページ | タジン鍋 »

2010年10月18日 (月)

なぜ 戦争はよくないか

 黒人差別問題を扱った作品、『カラーパープル』の著者、アリス・ウォーカーの絵本、『なぜ戦争はよくないか』(偕成社)は、黒のストイックな装丁とストレートなタイトルで、目を惹く。

 そっと、かたわらにいる子どもたちに語りかけるように、「戦争」のまなざしを通して、「戦争」を語る。

 戦争だって

 自分の考えをもっているわ

 だけど けっして知ろうとはしないのよ

 じぶんがいま おそおうとしているのが

 だれなのかを

 わらの匂いをかぐロバと、夕食のポレンタと卵のことを考える男の子、子守唄を歌いながら赤ん坊を抱く母親、あたりまえの穏やかな日常に、「戦争」は襲いかかる。

 

 戦争は

 たくさん経験を積んでも

 少しも賢くならないのよ 

 じぶんのものじゃない

 どんなものも

 戦争は

 へっちゃらで

 破壊してしまうの

 戦争よりもずっと

 ずっと古いものだって

 へっちゃらで

 戦争は、少しも学ぶことなく、悲劇を繰り返す。さまざまなものを破壊し、食べつくし、「戦争が食べつくしたあとに のこるのは 大地に たまった 唾液みたいな ぬるぬるとした 水たまり それが しみだして 地下水に まじって 村の 井戸水に入りこむ」

 その水は人を蝕む。体だけではなく、きっと心も。

 この戦争の水がしみ込んだ大地の上に立つ私たちは、どうすればよいのか。

  それでも

  戦争が正しいというなら

  ある日 

  みんな

  飲まなければいけなくなるわ 

  戦争のしみこんだ

  水を

  この場所で

  突き放すように終わるラストページ。深い井戸を覗き込む人々の真上は満月が美しく輝く。

  著者は、現実を淡々と語る。さりげなく、深い祈りを背後に抱えて。

 数年前に来日した際、彼女が言ったことばを思い出す。

 「東京の大地は、もうこれ以上建物はいらないっていってるわ」

 

 

 

 

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