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2010年9月14日 (火)

ルバーイヤート

 季節は、夏から秋へ凋落し、日が短くなり、心細い夕べがやってくる。

 十一、十二世紀のペルシアに生きた詩人ハイヤームのルバーイヤートのことばが舞い落ちてくる。

 

 来て去るだけの一生になんの益がある。

 この世を織りなす縦糸と横糸の交わりはどこにある。 

 われわれは罪もなくこの世につながれ、

 そして燃やされて灰になる、その煙はいずこ。

 ああ、無益に疲れはててしまったことよ。

 天空にきらめく大鎌がわれらを刈りとる。

 ああ、苦しや、無惨なこと! 瞬きする間に、

 われらは望みも叶わず、消えていく! 

   『ルバイヤート』(オマル・ハイヤーム著 岡田恵美子編訳、平凡社ライブラリー)

  生の実感というものは、「儚い」。これこそ真実ではないだろうか。

 どれだけ、ポジティヴに生きようと、生は一瞬の幻。世の中の不穏な空気や生きることの謎を追及せざるおえない、私たちに、情報はあらゆる方法で糸口を与える。多くのマニュアル本や、スピリチュアル本、魂の目的を、引き寄せの法則を…。

 見えない世界にも多くの答えがあるだろう。けれど、生きることの厳しさ、苦しみの深まりの先にこそ、本当の喜びが見えてくる。リアルな日常を掬いあげることばにこそ、真実が隠されている。

 日本という島国に生きる。内戦や亡命を経験しない今、こころの荒廃が進んでいるように思える。

 疲れ果てる、生。ああ、確かに。だがしかし、一回限りの、まばゆいばかりの、命。これも確かな真実。

 ひとりひとりの意識の中で、何かを、摑みとるしかないのだ。

 暗闇に惑い、倒れそうになっても、「ことば」があるということ。それは、私の救いだ。多くの命が、「来て、去る」。ただそれだけのこと。

 ただそれだけだ、ということを、同じように考えた人間がいる。

 詩が永遠に生き続けるのは、やはり、人間にとっての「光」だからだ。

 ことばを知りたいと思う。深い愛を感じたいと思う。

 どれだけ、感じることができるだろうか。

 儚さの上にある、今ここにあることの、喜びを! 

 

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