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2010年8月10日 (火)

数が示す真実

 百歳を越えたお年寄りの所在不明のニュース。日増しにその数は増え、増える数ごとに、この国の危うさが、浮き彫りになり、また、人の世のはかなさに、言葉を失う。

 数、が真実を明らかにする。

 「イラク・ボディー・カウント」(IBC)、イラク戦争で殺された市民や子供の数を、数え続ける活動をしているNGOがある。(朝日新聞、夕刊、2010、8/9)

 冷たい数字で示される「抽象的な死」ではなく、その背後に、苦しみ続ける遺族がいる「具体的で立体的な死」として伝えようと努力している、という。

 「死」は、いついかなる時にも、具体的なリアルな「血」の流れる場所にある。

 しかし、数が大きくなるに従って、それは、歴史という事象の海に紛れ込み、抽象的な死と化して、たたずんでいく。今、ここを生きる、人間の想像力が枯渇しなければ、その数字は、常に痛みのある「死」として、胸に刻まれることだろう。

 一方、日常と化した戦争に麻痺せざるをえない精神もあるだろう。狂気に震える魂をやむなく守るために、泣き叫ぶ乳飲み子を、一日も長く、呼吸させるために。

 ひとり、ひとり、ひとつ、ひとつの、命。その重み。

 書かれた記事の背後にある、燃える命の叫びを聞く。

 日常の喧騒に耳を塞がれることなく、遠い異域から訪れる、声を、聞こう。

 そして、まなざしを向け、胸に手をあてる。

 

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