数が示す真実
百歳を越えたお年寄りの所在不明のニュース。日増しにその数は増え、増える数ごとに、この国の危うさが、浮き彫りになり、また、人の世のはかなさに、言葉を失う。
数、が真実を明らかにする。
「イラク・ボディー・カウント」(IBC)、イラク戦争で殺された市民や子供の数を、数え続ける活動をしているNGOがある。(朝日新聞、夕刊、2010、8/9)
冷たい数字で示される「抽象的な死」ではなく、その背後に、苦しみ続ける遺族がいる「具体的で立体的な死」として伝えようと努力している、という。
「死」は、いついかなる時にも、具体的なリアルな「血」の流れる場所にある。
しかし、数が大きくなるに従って、それは、歴史という事象の海に紛れ込み、抽象的な死と化して、たたずんでいく。今、ここを生きる、人間の想像力が枯渇しなければ、その数字は、常に痛みのある「死」として、胸に刻まれることだろう。
一方、日常と化した戦争に麻痺せざるをえない精神もあるだろう。狂気に震える魂をやむなく守るために、泣き叫ぶ乳飲み子を、一日も長く、呼吸させるために。
ひとり、ひとり、ひとつ、ひとつの、命。その重み。
書かれた記事の背後にある、燃える命の叫びを聞く。
日常の喧騒に耳を塞がれることなく、遠い異域から訪れる、声を、聞こう。
そして、まなざしを向け、胸に手をあてる。
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