うら若草のもえいずる心まかせに
朝の窓から吹き込む風に、雨の気配が漂っている。昼ごろから雨になるらしい。しっとりとした、空のたたずまいだ。
風の匂いが旅情を誘い、萩原朔太郎の詩が、くちびるに上ってきた。
旅情
ふらんすへ行きたしと思ヘども
ふらんすはあまりに遠し
せめては新しき背広きて
きままなる旅にいでてみん。
汽車が山道をゆくとき
みづいろの窓によりかかりて
われひとりうれしきことをおもはむ
五月の朝のしののめ
うら若草のもえいづる心まかせに
『萩原朔太郎詩集』(岩波文庫)
気ままな心に誘われて、日常を離れて、新しい景色が見たくなる。
詩は、たった数行で、未知の旅へと心を連れ去ってくれる。移り行く季節の、色鮮やかな営みを、もう一度、ことばでたどる。
フランスは、もう遠い時代ではないけれど、憧れるピュアな思いは、永遠のものだろう。
魂が焦がれる土地へ、私も、早く行ってみたいな。
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