マラルメの白
まっさらなページの白。その器の中へ、言葉を置いていく緊張感が好きだ。
フランスの象徴派詩人、マラルメの「わが船の帆の素白(ましろ)なる悩み」という言葉は、白い船の帆を、無限の可能性を持ったまっ白い紙の象徴ととらえ、詩人は、この紙に文字を書かねばならないが、ひとたび書いてしまえば、白の純潔、白の清浄は汚され、可能性は可能性ではなくなる、書こうにも書けない詩人の悩みを描いていると、澁澤龍彦(「夢のある部屋」河出文庫)は書いている。
確かに、まっさらな白を見ていると、そこに広がる無限の可能性に幻惑される。
白い波が、永遠に寄せては返し、しているように思える。
波打ち際に立ち、そっと、打ち寄せる貝殻。
見たことのない美しい贈り物こそが、言葉であろう。
しばし、神々しくきらめく、白い紙を見つめていよう。
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