在ることの 不思議
在ることの 不思議、について、考え始めている娘の 声。
不思議
私は不思議でたまらない、
黒い雲からふる雨が、
銀にひかっていることが。
私は不思議でたまらない、
青い桑の葉たべている、
蚕が白くなることが。
私は不思議でたまらない、
たれもいじらぬ夕顔が、
ひとりでぱらりと開くのが。
私は不思議でたまらない、
誰にきいても笑ってて、
あたりまえだ、ということが。
金子みすずの「不思議」。教科書を 読み上げる 声。の揺らぎの中に、心に芽生えた形にならぬ、命の「不思議」への果てなき問いが聞こえてくる。
金子みすず童謡集(ハルキ文庫)をひもといていた。柔らかなみすずの 声。
目にとまった詩。
積もった雪
上の雪
さむかろな。
つめたい月がさしていて。
下の雪
重かろな。
何百人ものせていて。
中の雪
さみしかろな。
空も地面もみえないで。
存在の不思議は、喜びと紙一重の悲しみに満ち満ちている。決してほどけない謎を、心で、ことばで、追いかけていく。届かない天空の光に、いつか溶け込んでいくまで。詩人のまなさしは、生と死をつなぐ懸け橋として、空に浮かぶだけ。
さみしかろな。
さみしかろな。
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