氷上の美
バンクーバーオリンピックの映像の白、そして窓辺には白い雪がはらはらと舞い落ちている。
冬の祭典は、どことなく、汗とは無縁の冷ややかな美しさに満ちている。でも、この舞台で光を浴びるまでの日々は、間違いなく、汗と涙の連続であることは間違いないだろう。
中学、高校と陸上部に所属していた。振り返ると、いつも風と共に走っていて、陽光の真下のグラウンドの土煙が、ときおり、香ばしい思い出とともに、よみがえってくる。
試合の緊張感や、雷管が鳴る瞬間の「無」とも「空」とも呼ぶときを、何度も経験したことは、詩を書くときの集中力につながっていて、生きることに、何一つ無駄なものはないのだな、と感じる。その時、その時、何かに夢中になって、自分のエネルギーを全部注いでやり遂げてきたことは、心の根底に刻まれていて、ことばにはならない励ましを与えてくれるように思う。
競う、ということは、もちろん、他者との闘いであり、勝つものはメダルを手にする。でも、本当は、自分との闘いを、いくどもいくども繰り返しているのだと思う。目に見えるメダルよりも、己の手で心に輝くメダルをつかみ取ることが、生きる醍醐味かもしれない。
速さ、美、輝かしい自分へと向かっていくオリンピック。
人生そのものが、「自分」という素材を見つめて輝かせる、一夜限りの祭典なのだろう。
ガンバレ! 日本!